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企業と温暖化対策~最近の動向~

1.排出規制の義務化と排出量取引

政府は2010年3月地球温暖化対策基本法案を国会に提出しました。法案では温暖化ガスの排出量を2020年に1990年比で25%減らす目標を設定。そのための国内排出量取引制度の創設、地球温暖化対策税の11年度実施、1次エネルギーに占める太陽光、風力、水力などの自然由来の再生可能エネルギーの割合を20年までに10%に拡大、原子力の推進などの政策が盛り込まれています。

排出量取引制度については、主要企業を対象にした制度設計が10年に本格化しますが、排出量の上限を決める方式を総量規制にするのか、生産あたりの排出量(原単位)を目標にするのか意見が分かれ、経済界は取引制度の導入自体に反対しています。また、自然エネルギーについては、事業者や家庭が発電した電力を電力会社が一定価格で買い上げる「全量買い取り制度」の導入も検討されています。

環境影響評価(アセスメント)法の改正案も国会審議中。道路や空港の整備などによる環境影響を事前に調べ事業に反映させるため、計画を作成する段階で複数案を比較しながら影響を調べ、より影響が少ない案を選ぶ「戦略的環境アセス」を義務付けることが柱となっています。

改正省エネ法では、エネルギー消費が増えている家庭とオフィスやコンビニ等の業務部門における省エネルギー対策を強化しています。これまでの製造業を中心とした工場や事業場(ホテル、病院、学校など)単位でなく、(1)事業者単位(企業単位)のエネルギー管理義務、(2)フランチャイズチェーンについても、一事業者として捉え、事業者単位の規制と同様の規制を導入しました。

東京都は2010年4月から、独自の排出量取引制度を取り入れた排出量削減規制を開始しました(東京都環境確保条例)。都の規制は約1400の大規模事業所が対象で、02~07年度のうち任意の連続した3年間のCO²排出量の平均値を基準に10~14年度に工場などで6%、一般のオフィスビルなどで8%の削減を義務付けています。事業所が余分に減らした分は排出枠として、11年からスタートする排出量取引制度で売却でき、逆に超過した分は排出枠を購入し、補うことができます。

埼玉県でも11年4月から約600の大規模事業所を対象にCO²排出量削減を義務化する予定。また、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県と4政令市で構成する「8都県市首脳会議」はCO²削減義務化や排出量取引を首都圏全体に広げる方針を決めています。

2.環境コストの透明化と資産除去債務会計

環境コストを反映させる会計基準が導入されます。11年3月期決算から資産除去債務会計により工場などの固定資産について法律や契約で義務付けられた将来の除去費用や原状回復費用をあらかじめ計上する、環境負債の引当が義務化されます。欧米では、企業が将来にかけて負う環境保全コストを決算書に反映させることが主流で、会計基準の国際化の一環でもあります。

<表-1>企業と地球温暖化対策に関する最近の動き(10年4月時点)

2008年
6月
生物多様性基本法制定
2009年
3月
日本経団連が生物多様性宣言を発表
4月
地球温暖化対策推進法が改正
11月
太陽光発電の固定価格での買い取り制度開始
12月
第15回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)開催(コペンハーゲン)
2010年
3月
地球温暖化対策基本法案、改正環境影響評価法案が国会審議入り
4月
改正省エネ法施行
東京都が温暖化ガス排出量削減規制開始(東京都環境確保条例)
資産除去会計で環境債務の引当義務化(11年3月期決算より)
8月
国内初のスマートグリッドの実験開始(青森県六ヶ所村)
10月
生物多様性条約第10回条約締約国会議(COP10)開催(名古屋)
11月
第16回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP16)開催(メキシコ)
2011年
4月
東京都が排出量取引制度を開始
埼玉県がCO²削減を義務化(埼玉県地球温暖化対策推進条例)
年度内
地球温暖化対策税(環境税)と排出量取引制度(国)の導入

3.企業対応の状況

このような状況のなか、企業は省エネルギー化や環境負荷削減などの環境対策を事業拡大につなげる経営戦略の一環として、積極的に取り組みはじめています。CO²削減に向けた空調設備の更新や発光ダイオード(LED)照明、太陽光発電、コージェネレーション(電熱併用)などの設備やそれらを管理するシステムなどの投資に加え、製品レベルでも、環境負荷の低さを戦略的に打ち出すべく、製品の小型化・軽量化や素材のリサイクルなどが進んでいます。

<表-2>企業が取り組む環境対策(例)

ソニー 製品の重さを15年度に08年度比10%削減、50年に環境負荷ゼロに
花王 洗剤などで植物系原料へ転換、容器の小型化、20年に製品売上高当たりCO²排出量を05年比35%削減
セブン・イレブン・ジャパン 発光ダイオード(LED)照明、太陽光発電などを省エネ対応の環境配慮型の国際標準店舗を開発、5年間で全世界2万店に導入
アサヒビール 20年までにグループ全体でCO²排出量を08年比で30%削減
日本郵船 10年春から三菱重工と共同で運行時の燃費とCO²排出量を10%削減できる新型運搬船を導入

基本キーワード

「気候変動枠組み条約」

大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン等)の増大が地球を温暖化し自然の生態系等に悪影響を及ぼすおそれがあることを背景に、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的として、1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED、地球サミット)で作られ、現在日本を含む193カ国及び欧州共同体が締結。

「生物多様性」

地球上に多様な生物が存在し、大気、水、土壌など環境の自然的構成要素との相互作用によって多様な生態系が形成されている状態のこと。生物多様性条約は、気候変動枠組み条約を同じく1992年リオデジャネイロで開催された地球サミットで作られ、08年10月までに日本を含む約190カ国が締結している。生物多様性の保全、生物資源の持続可能な利用、遺伝資源による利益の公平な分配の3つを大きな目的の柱としている。02年に10年までに生物種の絶滅速度を顕著に減少させる目標を決めている。

「生物多様性基本法」

生物多様性の保全と持続可能な利用をバランスよく推進することを目的に08年に制定。保全と利用に際しては、予防的順応的な取組方法を長期的な観点と温暖化対策との連携を考慮しながら推進する。白書を作成し、生物多様性国家戦略を策定し、地方公共団体は地方版戦略を策定する努力義務を規定。

「地球温暖化対策推進法」

地球温暖化対策推進法は、国、自治体、企業および国民が温暖化ガスの排出抑制に取り組む責務を定めたもので、1998年に制定。09年の省令改正で、企業に義務付けている温暖化ガスの排出量の報告制度を見直し、海外や国内から調達した排出枠と自社の排出量を合算することが認められた。

「スマートグリッド」

ITを活用して家庭や企業の電力使用状況を把握し、自動制御し、安定的に電力供給する次世代送電網。

「グリーン・ニューディール」

米オバマ政権が打ち出した環境対策への積極的な投資により、需要や雇用を生み出し、経済活性化につなげる政策。

「キャップ&トレード方式」

政府が温室効果ガス排出総量の上限(排出枠:キャップ)の交付総量を設定し、個々の企業に排出枠を設定する。企業は排出量削減を行い、設定枠を下回った部分は売買でき、不足した枠は余った企業から購入することができる(トレード)排出量取引制度の仕組み。

「省エネ法」

省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)は、1979年の石油危機を契機に燃料資源の有効な利用のため、工場、輸送、建築物及び機械器具についてのエネルギー使用の合理化を進める目的で制定。燃料、熱、電気などのエネルギーを使用する工場・事業場(ホテル、病院、学校など)は、年間エネルギー使用量(原油換算値)を国に届け出て、指定を受けたうえで、エネルギー管理者・管理員を選任し、定期報告書などを提出し、管理を行うことが義務付けられている。
改正省エネ法では指定基準が改正され、工場・事業場ごとの管理から企業単位での管理に変更。2009年度の年間エネルギー使用量が1500kl以上であれば、国に届け出て、特定事業者の指定を受け、エネルギー管理統括者と管理企画推進者を選任し、企業全体でエネルギー管理体制を推進することが義務付けられる。また、コンビニエンスストアなどのフランチャイズチェーンも約款等の取り決めで一定の要件を満たし、年間エネルギー使用量が1500kl以上であれば、フランチャイズチェーン本部が同様の義務を負う。

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